好きなんだけど!

「痛い!」

「早く拭け、バカ!」



ハッチバックのラゲッジルームを開け、郁実を腰かけさせると常備してあるタオルを取り、投げつける。



「ふんだ、図星のくせに」

「俺がいつひどくしたよ!」

「意地悪いことするじゃん」



それなら心当たりがなくもないため、口をつぐんで、もう一枚タオルがなかったかと、奥に積んであるツールボックスをあさった。

すると無防備になった腹から、いきなり郁実がハーフパンツに手を突っ込んできて、腰骨のあたりをなでたので、思わずぎゃーっと叫んで飛びすさる。

その勢いで、ラゲッジドアに頭を打ちつけた。



「いって…!」



後頭部を押さえて呻いているところに、笑い声が届く。

さすがに叱ってやろうとした瞬間、白いものが視界を横切った。

タオルだ、と気づいたときには、首にかけられたそれにぐいと引っ張られ、なかばぶつかるような形で郁実と唇を重ねていた。

タオルの両端をしっかり持って、健吾を拘束しておきながら、郁実が間近でにやっと笑う。



「車でしたことある?」



再び絶句。

郁実が吹き出した。



「あるんだあ」

「…この車では、しない!」



営業車としても使う車でそんなことしたら、仕事中にろくでもないこと思い出して、大変な目に遭うに決まっている。

もう一度健吾を引き寄せ、軽いキスをした郁実は、気が済んだのかようやくタオルを健吾の首から外す。

変な汗をかきつつ運転席に乗り込むと、ラゲッジを閉めた郁実も助手席に滑り込んできた。

帰るぞ、と言うのも白々しくて、無言のまま車を出す。



「ねえねえ」

「なに」

「やっぱり寄ろう」



なにを言い出すのかと、横目で助手席を確認する。

髪を拭きながら、郁実がにこっと笑いかけた。