肩をすぼめて小さくなった健吾くんが、私の取り出した包みを見て目を丸くする。



「なに?」

「お誕生日。大学も受かったし、ちゃんとバイト始めたんだ、ずっと続けられるようなの」

「バイト代、使ってくれたのか」

「たいしたものじゃないけど」



開けていいかと仕草で訊くので、もちろんとうなずき返すと、健吾くんが丁寧に包装を解いて、香水の瓶を取り出した。



「すげえ、嬉しい」

「瓶もスタイリッシュでかっこいいんだけどね、香りがすっごく健吾くんのイメージなの」

「俺のイメージ?」

「うん、つけたら2割増しでかっこいい。絶対つけて」

「2割ってすごいな」



笑いながら、手首に軽くスプレーして香りを確かめる。



「あー、好きな匂い、毎日使うよ、サンキュ」

「来年は、一緒に過ごそうね」

「だな」



本当に嬉しそうに、まだ瓶をしまわずに眺めている。

健吾くんの好きなところ、ひとつ追加。

贈り物を本気で喜んでくれる。



「あれ?」



どこからか携帯の震える音がして、テーブルの上を探したけれどなく、バッグにもなく、椅子の背にかけておいたコートのポケットの中で見つけた。



「靖人だ」



ポテトを食べながら開き、短いメッセージを読み終える頃には、私は立ち上がっていた。



【引っ越す。じゃあな】