「どした?」



健吾くんが、不思議そうにこちらを見る。



「ううん」

「そっか」



少し身体を起こして、私の顔をなでてくれる。

優しい微笑み。



「好きだよ、郁」



ああ、そうか。

これ、ドキドキしてるんだ。

健吾くんが好きで、今が幸せで、それで胸が鳴ってるんだ。

腕を伸ばして、首に抱きついた。



「もう一回言って」



腕の中で、健吾くんが苦笑したのがわかる。

私の背中を、なだめるようになでながら、「好きだよ」と要望通りに言ってくれた。



「もう一回」

「好きだよ」

「ずっと言ってて」



ぎゅっと抱きしめられた。

よしよしと頭をぐしゃぐしゃにされて、さらに抱きしめられる。



「言ってやるけど、信じろよ?」



信じる。

信じるよ。

だから言って。


目尻にそっとキスされて、涙がにじんでいたことに気がついた。

閉じていた目を開けると、大好きな顔が私を見つめている。


愛しそうに私を見下ろして、ついばむキスを何度か落として。



「好きだよ、郁」



蕩けそうに甘い声が、そうささやいた。