健吾くん、私ね。
ちょっとわかった気がするの。
どうしてあんなに想ってもらいながら、ずっと不安だったのか。
温かいカップを手に、秋の空の下に出た。
雲は高いところにしれっと浮かび、風にちぎれて散っている。
わかった気がするの。
──私がしていたのは恋で。
健吾くんがくれていたのは、愛だった。
つまりは、そんな感じ。
健吾くんが私に恋をしていないと感じたのは、ある意味では正しくて、でも私が考えていたような意味ではなかった。
私の想像よりはるかに深くて広いところで、彼は私を想ってくれていたのだ。
ずっと、最初から。
でもそれは、私の恋心と一対一になるような性質のものじゃなくて、だから私には、発しているのと同じだけ返ってきてはいないように思えて、そこだけ見て不安になっていた。
そもそも私の恋心は、半分くらいが"恋に恋する心"だったようなもので、要するになにもかも幼くて、それに気がつくのにすら、こんなに時間がかかる始末。
ほんとごめん、健吾くん。
それからありがとう。
もらっていることに気づかないほどの愛情を、ありがとう。
もう少しがんばって、私なりの順番をちゃんと守って、今一番やるべきことを終わらせたら、会いに行くね。
これまでもらった分の愛を、倍くらいにして返しに行く。
それから、今さらだけど、恋してもらうの。
乾いた風が、スカートの中を吹き抜けていく。
もう、あと何か月かしたら着ることもなくなる制服。
私はこれを、子供のしるしみたいに考えていたんだけれど。
健吾くんからしたら、守るべきものの象徴だったんだろう。
同じ空を見ているんだよね。
月は、健吾くんのところから見ても丸いんだよね。
あのきれいな輪は、私たちふたりの頭の上に、同じようにあったんだよね。
そう思えばさみしくない。
待っててね、健吾くん。
私、そこに行くから、待ってて。
いつもみたいに、ポケットに手を入れて、笑って待ってて。
ちょっとわかった気がするの。
どうしてあんなに想ってもらいながら、ずっと不安だったのか。
温かいカップを手に、秋の空の下に出た。
雲は高いところにしれっと浮かび、風にちぎれて散っている。
わかった気がするの。
──私がしていたのは恋で。
健吾くんがくれていたのは、愛だった。
つまりは、そんな感じ。
健吾くんが私に恋をしていないと感じたのは、ある意味では正しくて、でも私が考えていたような意味ではなかった。
私の想像よりはるかに深くて広いところで、彼は私を想ってくれていたのだ。
ずっと、最初から。
でもそれは、私の恋心と一対一になるような性質のものじゃなくて、だから私には、発しているのと同じだけ返ってきてはいないように思えて、そこだけ見て不安になっていた。
そもそも私の恋心は、半分くらいが"恋に恋する心"だったようなもので、要するになにもかも幼くて、それに気がつくのにすら、こんなに時間がかかる始末。
ほんとごめん、健吾くん。
それからありがとう。
もらっていることに気づかないほどの愛情を、ありがとう。
もう少しがんばって、私なりの順番をちゃんと守って、今一番やるべきことを終わらせたら、会いに行くね。
これまでもらった分の愛を、倍くらいにして返しに行く。
それから、今さらだけど、恋してもらうの。
乾いた風が、スカートの中を吹き抜けていく。
もう、あと何か月かしたら着ることもなくなる制服。
私はこれを、子供のしるしみたいに考えていたんだけれど。
健吾くんからしたら、守るべきものの象徴だったんだろう。
同じ空を見ているんだよね。
月は、健吾くんのところから見ても丸いんだよね。
あのきれいな輪は、私たちふたりの頭の上に、同じようにあったんだよね。
そう思えばさみしくない。
待っててね、健吾くん。
私、そこに行くから、待ってて。
いつもみたいに、ポケットに手を入れて、笑って待ってて。