言ってから、「こんなののために」と私を指さすので、ハーフパンツの先っぽでも焦がしてやろうかと思ったけど、危ないのでやめた。

兄がそんな私たちを交互に見て、やがてまた立ち上がる。



「スイカ食いたくなったから、ついでに切ってくる」

「まだ冷えてないよ」

「カットして、冷たいサイダーに浮かべてやるよ」



うわ、よだれ出る。

舌なめずりしたい気分で、部屋の中に消えた兄を見送って、見上げてくる靖人の視線に気がついた。



「なに?」

「お前、何様だよって思って」

「郁実さまです」

「幸せな奴だよな」



火が終わった花火をぽいとバケツに捨てて、次を探す。

私はそろそろ線香花火の出番だと思い、だいぶ少なくなってきた袋の中で、細いこよりを探した。



「さっきの、ありがとね」

「お前に健吾くんはもったいないっての?」

「その前だよ」



花火が消えた庭は、かすかな虫の声と、火薬のにおいがする。



「別に、思ってたし」

「今、会ってないんだ。受験終わるまで会わないことにしたの」



線香花火を二本取り出し、「競争ね」と片方を靖人に押しつける。

靖人は文句も言わず、同時に火をつけ、私たちはこよりの先に溜まる、とろとろしたオレンジ色の球をじっと見つめた。



「俺にそれ言ってどうすんの、その間に奪えって?」

「誰もそんなこと言ってないでしょ」



なんだよ、隠し事はもう嫌だと思って、打ち明けただけなのに。

噛みつくと、手元で花火がジッと鳴った。

あわわ、危ない危ない、策略か。

靖人が喉で笑うのが聞こえる。



「まあ、なんかそんな感じはしてたけど」

「私が部屋にずっといるの、わかるもんね、靖人は」