私はおしぼりを顔に押しつけた。

ごめん。

ごめん、健吾くん。

私、勝手なことばかり言って、成長遅くて、本当にごめん。


なのにありがとう。

大好き。


好きすぎるから、ちょっと離れたいの。

わかってもらえる?



「なのにさあ…」



ん?



「いざフタ開けてみたら、好き好き言うわりに全然こっちのこと信じねえし、言っても聞かねえし、幼なじみの野球部とめちゃくちゃ仲いいし、あれ、俺ってなに? みたいな」



あれ…。

なにこの雲行き。



「こっちはいい歳だから一応我慢してたけど、よくなるどころか悪化する一方で、なにもねえっつってんのに青井とか引き合いに出して意味わかんねえしうるせえし」

「け、健吾くん…」



おしぼりをずらして、おそるおそる確かめると、健吾くんは再び、ものすごい不機嫌モードに入っていた。

目が、目が怖い。



「野球部も生意気に俺のこと威嚇しにかかるし、やったペンダントはそいつが持ってるし、また俺だけ意味わかんねえし」

「ごめん…ごめん、ほんと…」

「兄貴まで野球部のこと頼りにしてるし、俺入る隙ねえじゃんとかへこみかけたところに、郁の分際でこの俺を逆レイプとか」

「ぎゃ、逆レイプ!?」



つい叫んでから、慌てて口をおしぼりでふさいだ。

その上から健吾くんの手がかぶさる。

ふたりで周囲を探り、大丈夫そうだと判断して胸をなでおろした。

バカ! と赤い顔の健吾くんに叱られ、負けじと赤い顔で言い返す。



「だって、逆、って!」

「言っとくけどな、男だってああいうの、意に反してやられたら、けっこうな精神的ショックなんだからな」

「あ、そうなの?」

「お前、俺をなんだと思ってんだよ!」