嗚咽が漏れた。
兄が私の頭を抱き寄せてくれる。
記憶の中の母と同じように、背中をさすりながら。
「お前は隠し事するには、まだ早いよ」
私はもしかしたら、母を亡くしたとき以来かもってくらい、母を想って思いきり泣いた。
でもきっと、兄の言う”恋しい”とはちょっと違う。
ただ、もっと長く生きられたらよかったねって。
好きだったよって。
それだけだ。
だって私には、こんなに甘い兄がいるので。
母にはもう会えなくたって、大丈夫なのだ。
■
お盆が終わり、精霊馬たちを庭に埋めた頃、健吾くんから帰ってきたとの連絡が来た。
本当に【帰ってきた】とそれだけの、そっけないにもほどがある文面だったけれど、私はいつもの甘ったれを発揮し、彼が本気で怒っているなんて考えていなかった。
今度は自虐じゃなくてね。
健吾くんは私に対して、ずるずると怒りをくすぶらせるような人じゃない。
はっきりと、そう信じることができたからだ。
ところが。
「少しは反省したか」
あれ…。
久しぶりに会った健吾くんは、明らかにまだ目が怖かった。
おや?
思っていたのと違うよ…。
「えーと、うん…ごめんね?」
「なにが?」
「あの、突っ走ったことして」
私のほうから呼び出して、仕事帰りに来てもらったカフェで、健吾くんはソファにどっかりと座り、脚を組んで両手をポケットに入れている。
すっごい態度悪い…。
全席禁煙だから我慢しているんだろうけれど、そうじゃなかったら絶対もう2、3本吸ってそうなくらい不機嫌。
これはもしや、私は相当なことをしたのか。
兄が私の頭を抱き寄せてくれる。
記憶の中の母と同じように、背中をさすりながら。
「お前は隠し事するには、まだ早いよ」
私はもしかしたら、母を亡くしたとき以来かもってくらい、母を想って思いきり泣いた。
でもきっと、兄の言う”恋しい”とはちょっと違う。
ただ、もっと長く生きられたらよかったねって。
好きだったよって。
それだけだ。
だって私には、こんなに甘い兄がいるので。
母にはもう会えなくたって、大丈夫なのだ。
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お盆が終わり、精霊馬たちを庭に埋めた頃、健吾くんから帰ってきたとの連絡が来た。
本当に【帰ってきた】とそれだけの、そっけないにもほどがある文面だったけれど、私はいつもの甘ったれを発揮し、彼が本気で怒っているなんて考えていなかった。
今度は自虐じゃなくてね。
健吾くんは私に対して、ずるずると怒りをくすぶらせるような人じゃない。
はっきりと、そう信じることができたからだ。
ところが。
「少しは反省したか」
あれ…。
久しぶりに会った健吾くんは、明らかにまだ目が怖かった。
おや?
思っていたのと違うよ…。
「えーと、うん…ごめんね?」
「なにが?」
「あの、突っ走ったことして」
私のほうから呼び出して、仕事帰りに来てもらったカフェで、健吾くんはソファにどっかりと座り、脚を組んで両手をポケットに入れている。
すっごい態度悪い…。
全席禁煙だから我慢しているんだろうけれど、そうじゃなかったら絶対もう2、3本吸ってそうなくらい不機嫌。
これはもしや、私は相当なことをしたのか。