「気が楽になった」

「生島さんのこと?」

「うん」



金色のお鈴を磨きながら、正直なところを話す。



「やっぱり、お兄ちゃんに隠してるの、それなりにストレスだったっぽい。ばれてほっとしてる」

「俺、別にお前たちを引き離すとか、考えてないからな」

「うん、わかってる」



あれ以来、お互い健吾くんの話を持ち出すこともなくて、一件は宙ぶらりんともいえる状態になっていた。

別にそれで気まずくもなかったので、私も特に、その話をすることはなかったんだけれど。



「タイミングも、これでよかったんだと思うんだよね。お母さんたちを迎えに行くときに、隠し事したままじゃなくてよかった」



じっと聞いていた兄が、くすっと笑う。



「郁実が正直者に育って、母さんたちも安心してると思うよ」

「女の武器は神秘性だっていうのにね…」

「そういえばお前、昔、汚したパンツを…」

「わあー!」



いきなり変な話を持ち出した兄に、思わずお鈴の座布団をぽこんと投げつけた。



「こら、罰当たりなことするな!」

「なんで今その話なの!」

「いや、そういえば昔っからお前、隠し事でストレス抱えるタイプだったよなあと思って」



人の悪い顔で笑う兄に、なにかほかに投げつけるものはないかと探した。

兄の言っているのは、私が小学校に上がってすぐの頃の話だ。

学校帰りにお漏らしをしてしまった私は、恥ずかしくて、濡れた下着を上履き袋に隠し、黙っていた。

夏場だったのですぐに袋ごとカビが生え、数日で母の知るところとなったのだけれど、私はそのとき、もうこれでこそこそしなくていいんだと、ほっとして大泣きしたのだった。



「じゃあ隠さなきゃいいのにな」

「そういう度胸もないんだよね、残念ながら…」



今でも当時の安堵を思い出すと、胸がぎゅっと絞られてから、ふわっと安らぐような感覚になる。

兄が楽しそうに笑いながら「バカだよなあ」と言った。