「うちでは、学校で賞もらったりしたときには、夕食は好きなものでお祝いしたよ」

「そりゃ、学校はチームじゃないからなあ」

「会社はチームなの?」



営業は超個人主義だって、前に言ってたじゃないか。

二本目に火をつけながら、健吾くんが微笑んだ。



「チームだよ」

「サポーターは打ち上げには参加できないもんね」

「なにすねてんだよ」

「私だって健吾くんに嬉しいことあったら、一緒に喜びたいよ」



濃いオレンジジュースのクラッシュアイスをざくざくとストローでかき回しながら、ついふてくされた声を出した。

健吾くんが一瞬きょとんとして、それから笑う。



「俺もだよ。だから、こうして会ってんだろ」



ああ、ずるい、ずるい。

そんな一言で、ちょっと反抗的になっていた私の心は、雲の上まで浮上する。

仕事中に、私のことをちらっとでも考えてくれただけで嬉しいよ。

電話して呼び出してくれるなんて、熱が出そうなくらい嬉しい。



「あれ、ちょっと失礼」



胸ポケットから携帯を出すと、健吾くんは低めた声で素早い会話をし、「すぐ戻る」と簡潔に言ってまた携帯をしまった。

仕事の声、って感じだ。



「悪い、会社戻んないと」

「ううん、お疲れさま」

「今日は部屋来るなよ、遅くなるから」



伝票を取り上げて、きびきびした動作であっさり行ってしまう。

急に味気なくなったケーキをつついていると、頭の中に靖人の声が響いてきた。


──ガキじゃ物足りないってことじゃね?


バカ靖人。

よけいなお世話だよ。

それでも好きなんだよ、ほっといて。


物足りないだろうと思うよ、そりゃさぞかしいろいろ足りてないよ、こんなただの女子高生。


そんなのねえ。

私だって、痛いくらい感じてるよ。