「はい…あ、了解。ありがとう」
短い会話を終わらせると、携帯をしまって私をじろっと見る。
「時間切れだって。どいて」
「靖人から?」
「そう。お兄さんが帰ってくる。どいて」
それを聞いてしまったら、どかないわけにいかない。
のろのろと健吾くんの上から降りるのを待ちかねたように、健吾くんはさっと身体を起こし、私を押しのけるとベッドから降りた。
素早く最低限の身づくろいだけして、鞄を床から拾い上げると振り返りもせず部屋を出ていく。
足早に階段を下りる足音と、玄関のドアが開閉する音を最後に、家の中はしんと静まり返った。
私は呆然と、無音の中に座り込んでいた。
どれだけ時間がたったかわからない頃、ドアがノックされた。
「おい…うわ!」
入ってこようとした靖人が、悲鳴みたいな声をあげる。
「お前、なんだその恰好」
駆け寄ろうか部屋を出ようか迷っている感じで、縛りつけられたように戸口のところに立っている。
それを見ていたら、泣けてきた。
「靖人…」
「え、な、泣くなよ、なあそれ、まさか健吾くんじゃないよな」
首を振って、うなだれる。
事件性はないと踏んだ靖人は、ためらいがちに、そろりと部屋に入ってきた。
「どうしたんだよ…」
「バカなことした…」
どうしようもないくらいバカなことした。
自分で、最後の希望を打ち砕いて。
健吾くんまで怒らせて。
「とりあえず服、着ろよ」
うずくまって泣く私に、靖人はおろおろと、床からTシャツを拾い上げて、肩にかけてくれた。
短い会話を終わらせると、携帯をしまって私をじろっと見る。
「時間切れだって。どいて」
「靖人から?」
「そう。お兄さんが帰ってくる。どいて」
それを聞いてしまったら、どかないわけにいかない。
のろのろと健吾くんの上から降りるのを待ちかねたように、健吾くんはさっと身体を起こし、私を押しのけるとベッドから降りた。
素早く最低限の身づくろいだけして、鞄を床から拾い上げると振り返りもせず部屋を出ていく。
足早に階段を下りる足音と、玄関のドアが開閉する音を最後に、家の中はしんと静まり返った。
私は呆然と、無音の中に座り込んでいた。
どれだけ時間がたったかわからない頃、ドアがノックされた。
「おい…うわ!」
入ってこようとした靖人が、悲鳴みたいな声をあげる。
「お前、なんだその恰好」
駆け寄ろうか部屋を出ようか迷っている感じで、縛りつけられたように戸口のところに立っている。
それを見ていたら、泣けてきた。
「靖人…」
「え、な、泣くなよ、なあそれ、まさか健吾くんじゃないよな」
首を振って、うなだれる。
事件性はないと踏んだ靖人は、ためらいがちに、そろりと部屋に入ってきた。
「どうしたんだよ…」
「バカなことした…」
どうしようもないくらいバカなことした。
自分で、最後の希望を打ち砕いて。
健吾くんまで怒らせて。
「とりあえず服、着ろよ」
うずくまって泣く私に、靖人はおろおろと、床からTシャツを拾い上げて、肩にかけてくれた。