そうなんだけど。

でもそれは、別にいらないかなって思っていたからであって。

なんでかというと、靖人がいつも近くにいてくれたからであって。

今さらだけど、私…。



「靖人に甘えすぎなんじゃないか、とか考えてんだろ」

「一言一句、そのままのこと考えてた」



ほんとすごいね。

目を丸くすると、靖人が冷ややかな目つきになる。



「あのさあ、そうやって気をつかってるふりして、くだらない自己満足で俺を遠ざけて、俺が喜ぶと思う?」

「そこまで言わなくても」

「健吾くんにお前を取られて、その上なんでも話せる幼なじみってポジションまでなくなったら、俺、なにが残んの? そんなん、俺がかわいそうだと思わない?」



空っぽになり、ズーと間抜けな音をたてたジュースのパックを、靖人の手が取り上げる。

机の上のトレイにそれを放ると、「はい、話せ」と頬杖をついて聞く態勢になった。

反論しても絶対に負けるし、そもそも反論が思いつかない。

靖人の優しさに甘えずにいられない自分を、つくづくダメな奴だと思いながら、重い口を開いた。



「あーあ」



ゆうべの出来事を全部聞いた靖人が見せたのは、そんな他人事な反応だった。

えっ、説明させておいて、それ。



「あーあって」

「ご愁傷さまって感じだな」

「それだけ!?」



けっこう体力も気力も削って話したのに!

靖人がふんと鼻を鳴らす。



「いずれこういうことになるのはわかってただろ。むしろ遅かったくらいじゃねーの」

「あの、なにかアドバイスとか、励ましとかは」

「がんばれよ」

「だまされた…!」



顔を覆って嘆く私に、靖人が再びトレイを差し出した。



「話したら楽になったろ。これも残り、食えるんじゃね?」



確かに食べられそうだ。

もぞもぞと身体を起こし、まだかすかに温かいおかゆを口に運ぶ。

靖人はその様子を横から見ながら、なにやら楽しげににやにやしている。