熱を確かめるように、私のおでこに手を当てる。

思わずびくっとしてしまい、靖人の顔が曇るのを見た。



「なにもしねーよ」

「ごめん…」

「まだ熱あるな。食欲は?」

「あんまりない」

「おかゆ食わせてやってって言われてんだけど、ちょっと食ってみる?」



兄の作ったものなら食べられるかもという気になり、うなずく。

靖人は軽く口の端を上げてみせ、部屋を出ていった。



「健吾くんのことばれたのか」

「うん…」



温めてくれたおかゆを食べながら、力のない返事をした。

背中にクッションを当てて、ベッドの上に座ってみたものの、その姿勢をキープするのもつらい。

これは本格的に体調を崩したらしい。

見かねた靖人が、トレイごと引き上げて私を再び寝かせ、紙パックの野菜ジュースのストローをくわえさせた。

横になって、味のしない液体をすする。

なんとなく空腹は感じるし、なにも食べないよりはいいだろう。



「お前、夏休みとか春休みとか、必ず具合悪くなるよな」

「え、そう?」



椅子に反対向きに座り、背もたれに腕を預けた靖人が、あきれたように見下ろしてくる。



「普段、いい子しすぎなんじゃねーの」

「別に普通だよ」

「まあいいけどさ。治樹くんが俺に連絡してくるってよほどだぜ。なにしたんだよ?」

「お兄ちゃん、なんて言ってた?」

「妙なマネしないよう見ててくれって」



ずいぶん信用失ったなあ…。

悲しくなって、涙が出てくる。

すると靖人が机の上からティッシュを取って、目の周りを雑に拭ってくれた。



「なにがあったんだ」



…靖人には言いづらい。

これまでだったら、真っ先に泣きついて相談していただろうけど、今はもう、そんなことはできない。

なにも言わない私に、「あのな」と靖人がため息をついた。



「俺、別にお前と切れたいわけじゃないから。1か0か選べって言ったつもりはない。変な気つかわなくていい」

「でも…」

「健吾くんのことなんか、俺以外の誰に話すんだよ。友達もいないくせに無理すんな」

「友達いないって、響き悪い…」

「実際そうだろ」