カゴに入れていた缶ビールを棚に戻し、代わりになる飲み物を探しに、再びペットボトルのコーナーに行く。
律儀な健吾くん。
靖人はなんでか、私が靖人の気持ちに応えられないことよりも、健吾くんを信じきれていないことに、腹を立てていた。
ああそうだ。
少なくともそれをなんとかしない限り、ごめんねなんて言えない。
これまで通り話したいなんて言えない。
私が変わらない限り。
「ごめんね、遅くに」
「いいよ、おやすみ」
「おやすみ」
健吾くんに送ってもらったのは、夜1時を回った頃だった。
誰に見られる心配もない時間だから、本当に家の前までだ。
車を降りて、運転席側に回り、窓をノックする。
私が一緒に乗っているときには吸わない煙草を、さっそくくわえていた健吾くんが、気づいて窓を開けてくれた。
「どうした、甘えっ子」
「ふふ」
私の要求をすぐに察して、煙草を指に移すと、窓枠に腕をかけて、首を伸ばしてキスをくれる。
身を屈めてそれを受けながら、くすぐったくて笑った。
久しぶりに、ただ甘やかされて幸せ。
そんな時間を味わったからだ。
「来週、実家なんだよね」
「そう、じーさんの新盆でさ、さすがに帰らないとまずくて」
「帰ってきたら連絡くれる?」
「もちろん」
「おやすみ」
「ん」
最後にもう一度、軽く合わせるキスをする。
手を振って、家の門に向かおうとして、全身が凍りついた。
兄が、愕然とした面持ちで立っていた。
律儀な健吾くん。
靖人はなんでか、私が靖人の気持ちに応えられないことよりも、健吾くんを信じきれていないことに、腹を立てていた。
ああそうだ。
少なくともそれをなんとかしない限り、ごめんねなんて言えない。
これまで通り話したいなんて言えない。
私が変わらない限り。
「ごめんね、遅くに」
「いいよ、おやすみ」
「おやすみ」
健吾くんに送ってもらったのは、夜1時を回った頃だった。
誰に見られる心配もない時間だから、本当に家の前までだ。
車を降りて、運転席側に回り、窓をノックする。
私が一緒に乗っているときには吸わない煙草を、さっそくくわえていた健吾くんが、気づいて窓を開けてくれた。
「どうした、甘えっ子」
「ふふ」
私の要求をすぐに察して、煙草を指に移すと、窓枠に腕をかけて、首を伸ばしてキスをくれる。
身を屈めてそれを受けながら、くすぐったくて笑った。
久しぶりに、ただ甘やかされて幸せ。
そんな時間を味わったからだ。
「来週、実家なんだよね」
「そう、じーさんの新盆でさ、さすがに帰らないとまずくて」
「帰ってきたら連絡くれる?」
「もちろん」
「おやすみ」
「ん」
最後にもう一度、軽く合わせるキスをする。
手を振って、家の門に向かおうとして、全身が凍りついた。
兄が、愕然とした面持ちで立っていた。