優しい目が、私を見下ろす。



「あれでなにかを測ろうなんて思ってない。つけてくれてたら嬉しい、それだけ」



手が喉元に下りてきて、そこに置いていた私の手をどけると、トンと鎖骨の間を指でつついた。



「つけてなくても別にいいし、理由を訊いたりもしない。あんなので郁がそんなにがんじがらめになるんなら、怖くて俺、もうなにもやれないぜ」



ひっく、と場をぶち壊しにするしゃっくりが、私の喉から出た。

真っ赤になって口を押さえる私に、健吾くんは楽しそうに吹き出して、張りついた前髪をかき上げて、おでこにキスをくれる。



「で、今日は泊まってけんの?」

「早朝にお兄ちゃん帰ってくるから、その前に帰らないと」

「なんだ」



がっかりしたように言って、ぽんと頭を叩く。

叩かれたところに手をやって、つい訊いた。



「…私が泊まると嬉しい?」

「そりゃ、長く一緒にいられるのは嬉しいよ。いいから早く上がってシャワー浴びろ」

「私もコンビニに行っていい?」

「いいけど」



眉をひそめて、私をじろじろと上から下まで見る。

そして私を置いて部屋に入ったと思ったら、すぐにタオルを持って戻ってきた。



「身体を大事にするクセつけろよ。本番で万全じゃなかったら、悔やんだって仕方ないんだぜ」

「はあい」



お説教されて、おとなしく頭を拭く。

なんだか、なにをあんなに恐れていたのかわからないくらい、気持ちが穏やかになっていた。

冷えた肌に、タオルが温かく感じる。

健吾くんの家のにおい。



「それとさ、悪いんだけど」



エレベーターのボタンを押して、健吾くんが申し訳なさそうに私を振り返った。



「なに?」

「実は俺、コンビニで青井に電話しようとしてたんだ。それやってもいいか?」

「え?」