すでに雨でびしょ濡れの顔に、熱いしずくが滴った。

気づかれなかったと思いたいんだけれど。


いつも通りの健吾くん。

それが今の私には、震えるほど嬉しい。



「…あの」



思わず、また喉元に手をやって、はっとした。

しまった。

健吾くんの視線も、そこに落ちたのがわかる。

ペンダントがないことに気づいたんだろう、彼がごくわずかに、疑問を表すように眉を上げた。



「あの、こ…壊しちゃって」

「俺がやったやつ?」

「そう…ごめん、ごめんなさい」



健吾くんが、困ったような顔をしている。

私が唐突に涙をこぼしはじめたからだろう。



「いいよ、そんなの。気が向かなきゃつけなくたっていいんだし」

「違うよ、私はつけたかったの」

「まさか、それで今日会えないとか言った?」



図星を指されて、目を泳がせる。

改めて言われると、なんてガキっぽいことしたんだろう。



「俺が気にすると思ったか」

「そういうわけじゃ…」



ペンダントがあった場所を押さえて、恥ずかしさにうろたえた。

だよね、自意識過剰。

やっぱり健吾くんはそんなの、気にしないって。

コンビニまではすぐなのに、雨だから車で行くつもりだったんだろう、健吾くんの手の中で、キーホルダーが音を立てた。



「あのなあ」



その手が、濡れた私の頬をこすった。

指の甲でぐりぐりと、からかうように顔を押してくる。



「やっぱり郁にあんなのは、まだ早かったか?」

「ご、ごめん」

「縛るためにあげたんじゃないんだよ、まずそれをわかれ」