「青井さんじゃないけど、気づいてなかったとは言わせないぜ。まさにお前は、気づいたら厄介だから、気づかないふりしてたんだ。さらに言うなら」



ペンダントをいじりながら続ける。



「お前は俺が、お前の気持ちを考えて絶対に口に出さないと踏んでた。だから安心してたんだろ。残念だったな」



挑発するみたいに笑って、靖人はぐいと私に顔を近づけた。



「これまで俺になにをしてきたか、よく考えろ」



とっさに身体を引いて、あっと思った。

首の後ろに、ブツッと切れる感触が走る。

はらりとTシャツの上をすべって地面に落ちた華奢なチェーンを、私も靖人も、手も出せずに見ていた。

なにもついていない喉に、無意識に手をやる。

やがて拾い上げたのは靖人のほうだった。



「…返して」

「嫌だ」



嘘。

健吾くんからもらった、大事なペンダント。

思わず掴みかかった。



「返してよ」

「こんなのがないと不安か。あれば安心なのかよ」

「靖人に関係ないでしょ、返して!」

「嫌だ」



握った手を、どうやっても開いてくれない。

私は苛立って、焦って、不安で、いつの間にか泣いていた。

靖人の手に爪を立てる、その指に涙が落ちた。


なんで、なんで、靖人。

厳しくても、いつだって私の味方だったのに。



「う──…」



ぼろぼろと涙をこぼしながら、靖人の手を握りしめた。

ふいに靖人の身体が近づいて、反対の手が私を抱き寄せた。

きつく抱きしめられて、肩越しに月の明かりが見える。



「ごめんな、俺、もうただのお隣さんには戻ってやれない」