恐怖のあまりめそめそしはじめた私を、靖人があきれ半分、憐憫半分の目つきで見る。



「お前が全部先に驚くから、こっちはタイミングないんだよ」

「鈍いっていいなあ…」

「お前に言われたくないわ」



冷たく言いながらも、手を握ったまま歩いてくれる。

やがてようやく、中間地点である、記念碑のある場所に着いた。

この高校がまだ旧制中学だった頃の初代校長を讃える碑ということで、めったに来ないものの、来ると生徒は手を合わせてしまう。

靖人と並んで手を合わせてから、ここまで来たという証拠を手に入れるため、ルール通り記念碑を調べた。



「あ、これか」

「こんなもののために、死にそうな思いを…」



碑の裏側に貼られていた罰当たりな付箋のうち、6という数字が書いてあるものを剥がして、ゴールを目指して残りの行程を歩く。



「こんなんで死にかけるの、お前くらいだ」

「この間の模試の判定、どうだった?」

「なんだいきなり」



靖人が怪訝そうに眉をひそめる。



「同じくらい怖いものの話をして、気を紛らわせようかなと」

「まあまあだったよ、志望上げたから、まだまだがんばらないとだけど。お前は?」

「校内模試よりはいい感じだったかな。え、志望上げたってどういうこと? 東京でも行くの?」

「そう」



自分でもびっくりするくらい、ショックだった。

靖人の志望は、家から通える距離にある国立だったはずだ。

私も、一人暮らしなんて贅沢はできないので、自宅から通える大学を目指していた。

だからこれからもお隣さんだと、勝手に思っていたんだけれど。



「あ、そうなんだ…」



我ながら力のない声が出た。



「がんばってね…」

「がんばってねって声かよ、それが」



うう…。

応援しているのは本心だよ、ほんとに。

でも、だけど、だってさ。



「さみしいなあ…」

「ほんと勝手だな、お前」

「だってさあ、これまでこれだけ一緒だったんだよ。これからもずっとそうなんだって、思うじゃん…」