我ながら不満が声に出た。



『郁が高校生のうちはしない。キスまで』



頑なにそう言って、健吾くんは私にさわろうとしない。

それどころか見えるところで私が着替えるのすら嫌がり、死角に追い払うか、自分がそっちへ行く。



『なんでしないの?』

『なんでもなにもないだろ、やったら俺が逮捕されるわ』

『じゃあ、なんで私とつきあってるの』



すると健吾くんは怪訝そうな顔をして。



『好きだからだろ?』



こっちが訊いたのに、そう問い返してきた。



「好きならよけい、したくなるものじゃないの?」

「俺に訊かれてもなあ…」



靖人が顔をしかめる。

そういえば、こいつはそのへん、どうなっているのか。



「靖人はどうだった、ほらあの、軟庭の子と」

「いや、なにもなかったよ、そういう意味なら。つきあったっつってもちょっとだし、1年のときだぜ」

「ほお…」

「変な目つきすんな」

「やっちゃいたくなりませんでした?」

「うち今、リビングの窓も開いてるから、そういうこと大声で言わないでくんない?」

「ぶっちゃけいつ押し倒そうか考えませんでした?」

「セクハラで訴えるぞ」

「恥ずかしがらないで教えてよー」

「じゃあな、おやすみ」



窓がぴしゃんと閉められ、カーテンまで閉ざされた。

なんだよ、ケチ。

参考になりそうなことを期待したのに。