自虐?

…言われてみれば、そうだ。

完全に無意識だったことに愕然とした。

あれ、私、なにかおかしくない?

考え込みはじめた私に、靖人はなにか言いたげな視線を投げ、でもなにも言ってはくれなかった。



「あれっ」



花火も中盤に差し掛かった頃、川岸の人込みを眺めていた美菜さんが声をあげた。



「知り合い見つけたかも、ごめん、ちょっと声かけてくる」

「おう」



くわえ煙草で花火を見上げながら、健吾くんがうなずいた。

川の上流で打ち上げられるこの花火大会は、花火の規模で言うとそこまで大きくもないんだけれど、なんせ打ち上げ場所が見物席から近いのと、夏祭りと同時開催のため、屋台がずらりと並びにぎやかなのとで人気がある。

お腹もふくれ、ひと通り話題も一周し、残った私たち3人はぼんやりと花火を見つめた。

と、靖人が立ち上がった。



「俺もぶらついてきます」

「え、ひとりで?」



私に返事もくれず、さっさと行ってしまった。

健吾くんと顔を見合わせる。



「…靖人くんて、知ってるんだよな、俺らのこと」

「うん」

「じゃ、気をつかってくれたんだな」

「靖人らしいよ」

「せっかくだし、俺らも歩く?」



ちょっと眉を上げて微笑む。

夏休みが始まって一週間とちょっと。

まだ健吾くんと、ゆっくり過ごせた日はなかった。



「うん」



喜んでうなずいた私に、健吾くんはにこっと笑って、灰皿で煙草を消した。



「中学生カップルとか見ると、微笑ましくなっちゃうな」

「健吾くんもこういうところ、来た?」