健吾くんと靖人が会話しているのって、ちょっとシュール。

靖人の家に集まったことはあったものの、あのときはふたりの間に会話はなかった。

話題がケンのことに及ぶと、初めて名前を聞いた靖人が笑う。



「"いく"も"けん"もダブってて、ややこしいすね」

「だろ? 俺の名前から取ったんだってさ、無断で」

「取ってないってば」

「青井は案外、俺のこと好きだよな」



美菜さんの返しが一瞬遅れたことに、気づいたのはたぶん私だけ。



「あんたはどこまで自信家なの」

「けっこう謙虚だぜ」



健吾くんはなにも知らずに笑っている。

私まで胸が痛くなった。



「健吾くんて、鈍いの?」



大人ふたりがお酒を買いに出ると、靖人があきれたように言った。

あれ、気づいてたのか。

さすが靖人。

というより、私が前に情報を与えていたせいだな。



「夢にも思ってないんだと思う」

「あー…」



美菜さんに同情したのか、気の毒そうにため息をつく。

それから短い髪をぱりぱりとかいた。



「もっと見下してくる感じかと思ったのに、すっげー話しやすいのな。なんか複雑…」



面白くなさそうな顔だ。

ふふふ。



「子供の扱いには慣れてるからね」



自慢のつもりで言ったんだけれど、靖人は眉をひそめた。



「そこで自虐に走る必要なくね?」

「えっ…」