自分でも、あまり良くない状態だというのは分かっていた。
でも、頭で考えることと、心で感じることは違う。
頭では危険だと分かっていても、心では勝手に痛みを求めてしまう。
そして身体は、頭からの指令よりも心が求めることに忠実だった。
無心に指を傷つけていると、ふいに左手が宙に浮いた。
え、と目を見張って顔を上げると、手首を誰かにつかまれている。
視線をずらしていくと、そこには険しい表情をした青磁がいた。
「……ちょ、っと。何するの」
反射的に手を振り払おうとするけれど、つかむ力が思った以上に強くて、びくともしなかった。
「……お前こそ、何してんだよ」
青磁が低く呟く。
なぜだか背筋が寒くなって、私は右手を使って必死に彼の手から逃れようとする。
でも、振り上げた右手も一瞬にして捕らえられてしまった。
「やめ……っ、何、やめて、何すんのよ!」
両手をつかまれたせいで、ぐっと距離が近づいてしまう。
嗅ぎ慣れないにおいが、ふっと鼻先をくすぐった。
少しずらしていたマスクの隙間から忍び込んできた、柑橘と若葉の混じったような青い香り。
心臓がどくんと跳ねた。
自分以外の人間のにおいを感じたのは久しぶりだった。
でも、頭で考えることと、心で感じることは違う。
頭では危険だと分かっていても、心では勝手に痛みを求めてしまう。
そして身体は、頭からの指令よりも心が求めることに忠実だった。
無心に指を傷つけていると、ふいに左手が宙に浮いた。
え、と目を見張って顔を上げると、手首を誰かにつかまれている。
視線をずらしていくと、そこには険しい表情をした青磁がいた。
「……ちょ、っと。何するの」
反射的に手を振り払おうとするけれど、つかむ力が思った以上に強くて、びくともしなかった。
「……お前こそ、何してんだよ」
青磁が低く呟く。
なぜだか背筋が寒くなって、私は右手を使って必死に彼の手から逃れようとする。
でも、振り上げた右手も一瞬にして捕らえられてしまった。
「やめ……っ、何、やめて、何すんのよ!」
両手をつかまれたせいで、ぐっと距離が近づいてしまう。
嗅ぎ慣れないにおいが、ふっと鼻先をくすぐった。
少しずらしていたマスクの隙間から忍び込んできた、柑橘と若葉の混じったような青い香り。
心臓がどくんと跳ねた。
自分以外の人間のにおいを感じたのは久しぶりだった。