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「……あつ」
朝だというのに、家を出て駅まで歩くほんの十五分ほどの間に、首筋や背中が汗ばむほどの暑さだ。
マスクの縁のあたりに、こめかみから垂れた汗がたまって、じっとりと湿っている。
不快なことこの上ないけれど、マスクは外せない。
夏休みになったけれど、私はあまり変わりばえのない生活をしていた。
進学補習に参加しているからだ。
午前中の国語・数学・英語はほとんどの生徒が申し込んで受講しているけれど、午後の理科・社会はクラスで十人ほどしか受けていない。
せっかくの夏休みなのに一日中学校にいて勉強するなんて、と沙耶香は私を変わり者あつかいしていたけれど、
正直なところ、家にいたら何かと手伝いを頼まれてしまって勉強に集中できないから、暑くても学校に行ったほうがまし、という気持ちもあった。
それでもやっぱり、毎日主要五教科の授業を受け続けるというのは、かなりしんどかった。
普段の学校なら、間に体育や家庭科などの実技教科が入るので、良い意味での息抜きになるけれど、
五教科だとずっと神経を張り詰めて話を聞き、手を動かしてノートをとらなくてはいけないので、思った以上に精神的な負担が大きいのだ。
しかも、夏休みの特別時間割で、一コマ六十五分。
いつもの五十分授業に比べると、とんでもなく長く感じた。