青磁がぐんっと後ろへ下がる。


「俺は別にお前に付き添ってるわけじゃない」


そして押し出されるように前に出て、空へと昇っていく。


「ただ学校行くのがめんどいから、さぼってるだけだ」


大きくこいで、高く、もっと高く。

真っ白な髪がさらりと風に踊った。


あっそ、と私は答えて、空を見上げる。

青磁が何を考えているのか、考えるのが面倒くさくて、私は思考を停止する。


笑えてくるほど綺麗な青空だった。


「なんか、のど渇いたな」


ブランコをこぐのをやめて私と同じように空を見上げていた青磁が、独り言のように言った。


「近くにコンビニあるから行ってくるわ」


あっそ、と私はまた答えた。


「お前は?」


唐突に訊かれて、すぐには反応できない。


「お前も何かいる? ついでに買ってきてやるけど」

「マスク」


気がついたら口が勝手に答えていた。

青磁の顔がぐっと歪む。

私はハンカチを当てたままもごもごと続けた。


「お願い、マスク、買ってきて。お金は払うから」


さっきまではさっぱりとした顔をしていた青磁が、今は不機嫌そうに私を軽く睨んでいる。


「は? なんなの、お前。ふざけてんの?」

「ふざけてない。本気」

「ああ?」

「マスクがないと、学校、行けない」