話を聞いているうちに、当時の私がどんな行動に出たか予想できてしまって、頬が紅潮してくるのを自覚した。


「そしたら、急に、茜がコートに乗り込んできたんだよ」


青磁が吹き出して、けらけらと笑い出した。

私は恥ずかしさに項垂れる。


「やっぱり、そうか……うん、思い出した」


そのときの光景が鮮やかに蘇ってくる。


試合の邪魔になるのも構わずに、小学五年生になったばかりの私はコートの中に突撃した。

目の前で傍若無人な振る舞いをするそいつを、どうしても許せなくて、怒りを抑えきれなくなってしまったのだ。


「あれはまじでびっくりしたよ。いきなり駆け込んできて、あいつに突進して胸ぐらつかんで、」

「『ふざけんな、いい加減にしろ馬鹿野郎!』でしょ……」

「そう、それ! あれは爽快だった」


青磁がお腹を抱えて笑っている。

私も恥ずかしさとおかしさで笑いが止まらなくなった。


私が無謀にもそいつに食ってかかったそのあとは、めちゃくちゃだった。


体重が私の倍くらいもありそうな大きいやつだったから、私が胸ぐらをつかんだくらいではびくともしなくて、逆に『なんだ? このチビ』と腕をひねりあげられてしまった。

それが痛くてむかついて、私は全力でそいつの脛を蹴り上げて、それがさらに相手の怒りに火をつけた。


そして、今度は殴られそうになって……。

そこまで思い出して、あ、と声をあげてしまった。