青磁の話によると、私たちが初めて出会ったのは、小学三年生のときだった。

私がお母さんに連れられてお兄ちゃんの練習を見に来たときだ。


そのころの私はサッカーのルールも知らないし、見ていてもなにも分からないから、ただぼんやりとお兄ちゃんを目で追っていたと思う。


でもクラブの人たちは、物珍しくて私のことを見ていたらしい。

その中に青磁もいたのだ。


「茜ちゃんって言うんだって、お前と同い年だよ、とか言って、上の学年のやつに教えられたけど、俺はあの頃サッカーやるのが楽しくて仕方なかったから、どうでもいいやと思ってちゃんと顔も見てなかった」


いかにも青磁らしくて笑ってしまう。


「それにしても、どうでもいいはひどくない?」

「でも、お前もどうでもよさそうな顔してたぞ」

「う……まあ、そうかも。最初のころはサッカーなんて興味なかったし、早く帰りたいなーとか思ってた気がする」

「あー、そういう顔だった」


あの頃の私は、なんでも顔に出すタイプだったから、さぞつまらなそうな顔をしていたのだろう。


でも、何度か練習や試合を見に行くうちに、だんだんとルールが分かってきて、そうなると急にサッカーを見るのが楽しくなってきた。

試合のときには声をあげて応援して、負けたら悔しくて地団駄を踏むほどに熱中していた。