「深川くんの絵がね、県の高校美術展の大賞に内定したの」


予想もしていなかった言葉が飛び出てきて、私はしばらくぽかんとしてしまう。

それから、じわじわと彼女の言った内容が心に染みてきて、嬉しさと興奮が沸き上がってきた。


「え……すごいことですよね、それって」

「そうよ。県の代表として来年度の全国美術展にも出品されるの」

「えっ、全国? すごい、すごい!」

「先生もすごくびっくりして興奮しながら伝えてたもの。本人は『へえ』って感じだったけど」


その様子が容易に想像できて、思わず笑ってしまった。

里美さんもくすりと笑う。


「その美術展で入賞した作品は、明日の土曜日から一週間、県立美術館で展示されるんですって」


県立美術館は、電車で一時間ほど離れた街にある。

世界的に有名な画家の作品を集めた展覧会もよく開催されているらしく、テレビなどでしょっちゅう名前を聞く。

まぎれもなく、この県でいちばん大きな美術館だ。


そんなところに青磁の絵が飾られるなんて、想像しただけでどきどきする。

でも。


「茜ちゃん、ぜひ見に行ってあげてね」


その里美さんの言葉に、高揚していた気持ちが一瞬にして縮んだ。


「……いえ、あの。青磁とは、ちょっと、気まずくなってて。行ったら嫌がられるかも……」


彼の大切な晴れの舞台に私が邪魔をして、不快な思いはさせたくなかった。