青磁が指定した時間ちょうどに生徒玄関に行くと、靴箱の間に白い髪が揺れているのを見つけた。

こちらに背を向けて扉の外の空を見ている。


「おー、来たか」


私の足音が聞こえたのか、青磁がぱっと振り向いた。


「……うん、お待たせ」


待ち合わせなんて初めてだったので、妙に落ち着かない気持ちになる。

靴をはきかえて、少し俯きながら近づくと、青磁がひさしの下へ一歩踏み出した。


「色の本、借りてきたよ」

「おー、どうも。家で見るわ」


私から受け取った本を鞄に入れて、青磁がひさしの向こうの雨雲を見上げる。


「よし。まだ降ってるな」


なんだか嬉しそうだ。

私としては、靴が濡れそうでテンションが下がるんだけど。


ふうっとため息をつきながら顔をあげる。


雨音に包まれた世界。

目の前に広がるグラウンドには大きな水溜まりがいくつもできて、今日はサッカー部も野球部も活動していない。

一面の空はどんより曇っていて、青みがかった灰色の雲に覆われている。


玄関前のタイルには雨水が張っていて、そこに広がる波紋の数の多さから、雨の激しさが見てとれた。


あーあ、これは靴下まで濡れちゃうパターンだな。

そんなことを思いながら、憂鬱な気持ちで私は傘を取り出した。

すると、


「あ、ちょい待ち」


青磁に制止された。