恋さえまだ知らない私にとっては、分かるような分からないような、難しい台詞だった。

でも、その言葉はなぜか深く胸に刺さった。


夜明けに会いたくなるひとは、一緒に朝焼けを見たいと思うひとは、自分が心から愛するひと。


いつかこの言葉の意味を理解できる日がくるだろうか。

私にはまだ分からない。


「ああ、やっぱり本っていいな」


分からないながらもしみじみと呟く。


自分と全く違う生き方をしているひとが、自分と全く違う考え方で紡いだ言葉を、本を読むことで知ることができる。

私はそれに感銘を受けて読書が好きになったんだった、と久しぶりに思い出した。


寝なければいけないぎりぎりの時間まで読んで、それでもあと少し読み終わらなかったので、通学電車で読むことにして学校の鞄に入れる。


満ち足りた気持ちで眠りについて、そして綺麗な朝焼けの夢を見た。

空を見つめているとき、隣に誰か立っているような気がした。

でも、その姿は霞がかかったようにぼんやりしていて、顔はおろか、本当に誰かがいるのかさえもはっきりとは見えなかった。


私はまだ、ひとを好きになるということがよく分からない。