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二学期は、月日が経つのがすごく早い気がする。
気がついたらもう秋も終わりに近づき、ジャケットを着ないと外にいられないほど肌寒くなってきた。
学校までの通学路にはイチョウ並木があって、道の両側を彩っている。
見上げると、真っ青な秋空にくっきり映える真っ黄色のイチョウの葉が、驚くほど鮮やかだった。
風が吹くと枝が揺れて、無数の葉がはらはらと舞い落ちてくる。
金色の雨が降っているみたいだ。
そして石畳の道には金色の絨毯が広がっているのだ。
綺麗だなあ、と思いながら、いつもより少し速度を緩めて歩く。
去年の秋も、毎日毎日この道を通っていたはずなのに、銀杏の並木道だなんて気づきもしなかった。
きっと、俯いて自分の爪先だけを見て歩いていたのだろう。
「よう」
後ろから声をかけられて振り向くと、思った通り青磁がいた。
「おはよ、青磁」
「はよ。さみーな」
「寒いね」
青磁は肩を竦めて、上着のポケットに両手を突っ込んで歩いている。
見るからに寒そうだ。
がりがりで肉づきのない身体をしているから、きっと私よりもずっと寒いのだろう。
「マフラーとかネックウォーマーとか、つけないの?」
「あー、そういや持ってねえな」
「うっそ。マフラー持ってない日本人とかいるんだ」
「ここにいる」
青磁はなぜか偉そうに答える。
「中学の頃は親に買ってもらったの持ってたけど、失くしたんだよな」
「じゃあ自分で買えばいいのに」
「買いもん行くの面倒くせえ」