「晴れの日は色の加減、曇りの日は雲の重なり具合、雨の日は降り方と雨粒の舞い方。同じ天気でも全然違う。いつ見ても、どんな空でも、いつもと違うところがある。だから、観察すればするほど、描きたいって気持ちが出てくる」


なるほど、と私は頷いた。

たしかに、同じ曇り空でも、雲の色も様子も少しは違っているだろう。


でも、だからといって、いくらなんでも毎日毎日描いていたら飽きてきそうなものなのに。

結論。芸術家の考えは、一般人にはよく分からない。


「なんで青磁は空の絵しか描かないの？」


ついでに、もう一つ疑問に思っていたことも訊いてみた。


「……別に、空しか描きたくないってわけでもないけど」

「そうなの？ じゃあ、なんで空ばっかり描いてるの？」


彼はしばらく沈黙してから、「俺はさ」と口を開いた。


「綺麗だって思ったものを、綺麗だから欲しいって思ったものを、手に入れるために描くんだ」


これは質問の答えなのだろうかと訝しく思って、私は眉をあげて彼を見る。