「……あっそ。ま、いいか」


青磁が頭の上で手を組んで空を見上げる。


「今日のところはこれくらいにしといてやろう」


真面目な顔でそんなことを言うので、おかしくなって、私は「誰よ」と笑った。


「俺だよ」


相変わらず偉そうに答えた青磁は、それきり黙りこんだ。

見ると、寝転がったまま瞼を閉じている。


指先がリズムをとるように小さく揺れていた。

なぜだか、空の声を聴いているように見える。


私にも聴こえるかな、と思って同じように目を閉じてみたけれど、何も聴こえなかった。

なんとなく、マスクをつけたままでは聴こえないような気がした。


『マスクを外せないのは、お前のせいだろ』


青磁の言葉が耳の奥に甦る。


さっきは頭に血が昇っていて反発してしまったけれど、本当は、彼の言ったことが真実だと分かっていた。


マスク依存症になってしまったのは、自分に原因がある。

そんなことは、ずっと前から分かりきっていた。


でも、素直には認められなかったのだ。

自分の心の弱さを認めたくなかった。


今日、青磁のおかげで少し変われた気がする。

でも、私にマスクを付けさせている感情は、あまりにも根深くて強烈で、全く消えてくれない。


私がマスクから解放される日はくるのだろうか。

その答えはまだ見つからなかった。