もしかすると、渡の本質はこうなのかもしれない。
明朗で快活、よく笑い、無邪気で活発。
家族との確執で変化を迎えた心は、事件をきっかけに完全に暗い淵に落ちてしまった。

渡は言ってくれた。僕といれば自分の人生は消化試合じゃなくなるって。
僕が彼を少しでも幸福だった頃に戻せるなら、喜んで力になりたい。

姉の深空だけが彼を変えられるんじゃない。
僕の友情だって、渡を変えられる。

「なあ、星が見える」

木枠の古い窓辺に肘をつき、渡が空を見上げる。
まだブルーを残す空には、ぽつりぽつりと大きな星が昇り始めている。

「おー、大三角形。見える、見える」

僕が脇から覗き込んで指をさす。渡はどれかわからないようで眉をひそめた。

「どれとどれで三角だよ。あれ?」

「違う違う。大三角形はもっと目立って大きいんだよ。ほら、あそこの鉄塔の近くにひとつ。あれがアルタイル」

「はー?で、あとは?」

僕は渡に説明しながら、わくわくと胸に湧き上がる喜びを感じていた。
夏はまだ半分以上残っていて、僕らにはできることがたくさんある。

「慣れたら簡単に見つかるよ」

僕は星を眺めながら、まだ渡に見せていない誕生日プレゼントのことを考える。
今年は僕の好きな詩人の詩集にしてしまった。
来年は星座図鑑にしよう。