「これ、おまえが頼んだの?」

渡がプレートを指差すので僕は自信満々頷いた。

「きちんと予約したからね。蝋燭もあるよ。十九本」

取り出した蝋燭をキャラクターの顔にぶすぶす突き立てると、渡が堪えきれず笑い出した。
ケーキは結構凄惨な有様になった。
青いキャラクターの顔は穴だらけで、おめでとうプレートが額にめり込んでいる。

結局コーラとジャンクフード、穴だらけの青いケーキで乾杯した。

「全然祝われてる感じしない」

渡が笑いながら言った。こんなに楽しそうに笑ってくれるなんて思わなかったので、僕は自分の企画がなかなかいい線を突いていたのだと嬉しくなった。
随分気を許してくれたとはいえ、渡はやっぱりいつも無表情で無感動な男だった。
それが最近はどうだろう。ようやく心の底から笑ってくれるようになった。

僕は友人として、合格かな。

「いや、ホント怖いよ。これ、全然食欲わかないんだけど」

「ホント、誰だよ、これ買ったの」

とぼけて言うと、渡がチキンを指代わりに僕に突き付けて言う。

「おまえだ、おまえ」

渡があんまり楽しそうで、僕もつられてたくさん笑った。