八月二日、渡が十九歳になった。
この日は渡のバイトが昼番だったこともあり、夕方に遊びに行く約束をしていた。僕の誕生日は四月で、この日は渡がようやく同い年に追いつく日だった。ちょっと特別な気分で、友人のお祝いをしたかったんだ。

僕はチキンやハンバーガー、コーラなどジャンクな食品を買い込み、最後にホールでケーキを買った。子どもが喜びそうな有名なネコ型ロボットの顔を模したケーキを壊さないように運ぶ。
この暑さだ。渡の家までにケーキが悪くならないように保冷材を山のようにつけてもらった。

20分歩いて渡の家に行くと、出迎えた渡に怒鳴るように言う。

「お誕生日おめでとう!!」

「……ありがとう」

渡は僕の大荷物を見て、ひどく顔をしかめた。
ありがとうって言うなら、もう少し笑えよ。なんだよ、その迷惑そうな顔。

「なんだこりゃあ」

上がり込んだ僕が勝手にテーブルに荷物を広げ出すと、渡がケーキの中身を見て悲鳴をあげた。

「何ってケーキ」

「ふたりでホールケーキとか、狂ってんのか、おまえ。あと、なにこの青いの」

「リアルだよね」

「リアルさ求めてねぇから」

渡は仏頂面に磨きをかけたような表情をしていたけれど、僕がいそいそと取り出したケーキにプレートを突き刺すと、とうとう噴き出した。
マジパンのプレートにはチョコレートで『おたんじょうびおめでとう わたりくん』と書かれてあったからだ。