僕と渡はふたりでお見舞いの準備をした。
ふたりで金を出し合い、深空が好きだというひまわりの入ったブーケを用意した。大ぶりなひまわりがかさばるのでブーケはとても大きく派手に見える。
ケーキも持って行こうと、深空が好きなモンブランと渡の好きなチョコレートケーキを池袋のデパ地下で買った。

電車に乗って一時間ちょっとは、渡の好きだと言ったあの曲を聞きながら向かった。
この前の訪問より渡は落ち着いていて、僕はといえば、深空の望みを叶えてあげられたという達成感をすでに感じている。

「なんか、恒、機嫌いいな」

「そう?」

深空はきっと喜んでくれる。
また彼女の声が聞けるかもしれない。ありがとうと言ってくれるかもしれない。

病院につくと、受付はせずに病室へ向かう。
今日も深空は、ひとり眠っていた。
穏やかな顔で静かに眠る深空はやっぱり見とれるほど美しかった。長いまつげが影を落とす頬はこけていたけれど、柔らかそうに見える。

冷房が利いた部屋は、いつも通り暗く海底のようなムードだ。
僕は明るい空気を入れたくて、思い切ってカーテンを開け、窓も開放した。