次の機会はあっさり二日後にやってきた。午前が休講になり、僕が図書館にやってくると、いつもの席で遠坂渡が本を読んでいる。僕は決意通り近づくと、こんにちは、とひそめた声をかけた。

「ああ、一昨日の」

「あらためまして、ノートをありがとうございました」

僕は折り目正しく頭を下げると、ばっと顔をあげた。

「突然ですが、喉渇いてないですか?」

遠坂の視線は本に落とされていたけれど、僕の言葉にぐるりと首を巡らす。こちらを見つめる色素の薄い瞳が言っている。ナニコイツ……って。

「いえ、全然」

「僕はものすごく渇いていてですね」

「そうですか」

僕が唐突なのも否めないんだけど、どこまでも釣れない雰囲気の遠坂に、僕は思い切って言った。

「ここから駅方面に歩くと、でかいパフェが食べられる店があるんですけど、お礼かたがた付き合ってくれませんか?」

僕は図々しい人間ではない。
どちらかといえば、人見知りだし、前に立つタイプではない。

でも、この時の僕は積極的だった。
ちょっと気になっていた図書館の同志。親しくなるには最高の機会が巡ってきたんじゃないか?一昨日は不意打ちで、口下手に終わってしまった対面だけど、今日なら準備万端だ。