それから様々な手続きを経て、渡は少年更生施設に入った。
牢屋のような部屋で寝起きをし、半年後から昼間は軽作業が追加された。
渡は当然だと思った。自分は姉を殺したのだ。
本当なら死刑でもなんでもして、殺してほしかった。

一度、自分の上着と独房のタオルをつなぎ合わせて梁にかけた。死ぬつもりだった。

しかし、なかなかうまくいかずに手こずっているうちに、看守に見つかりあっけなく失敗。
あげく拘束衣をつけられ一週間も過ごした。
死ぬことには力がいる。その間に渡の死ぬための余力は失せていった。

施設に入ってすぐに渡は母親から長い手紙をもらった。
姉の出生に関する手紙だった。

渡の母と義父は元々恋人同士だったそうだ。しかし、義父にはすでに妻子があり、不貞の恋は妻の知るところとなった。二人は別れたけれど、その時すでに母のお腹には深空がいたという。女児の出生がわかると遠坂の妻はその子もとりあげた。深空は養女というかたちで遠坂家で育てられたそうだ。

渡の母はまだ若かった。恋人と娘を奪われはしたが、渡の父と出会い、二年後渡が産まれた。
元恋人と再会したのは渡の父が亡くなる少し前だったという。

『おまえに話さなかったのは傷つけたくなかったから』

母は手紙でそう言った。
渡にはすでに関係のないことだった。何の言葉も心に入ってこない。

―――俺は深空を殺した

それ以外の真実が見つからない。