「あのさ、恒」
「なに?」
「俺の母親と……会った?」
僕は驚いて渡の顔を見やった。そのわかりやすい態度で、渡は苦笑する。
「馬鹿、顔に出過ぎ」
渡の苦笑は柔らかく、どこか諦めを含んでいた。
「母親からやたらメールがくるなと思って。もしかしてってさ」
「渡、あのさ」
「いいよ。母親から、何か聞いた?」
渡は僕と彼の母の接触について、何か不満に思っているわけではなさそうだった。
「渡の今の暮らしについて聞かれただけ。お母さんからは特に何も」
仲良くしてほしいって言われたくらいだ。
それを言えば、渡が困惑することは目に見えていたので僕は言わない。
「ふうん」
渡は静かにつぶやき、歩いた。
僕の部屋の近く、以前ケーキを食べた緑地にやってくると、渡は先に立ち草を踏みながらベンチに向かう。
僕も後を追う。
「蚊がいそうだな」
そんなことを言いながら、ベンチにかける渡。戸惑いながら、僕も隣に座った。
「あのさ、ちゃんと話しておこうと思う」
ぽつりと渡が言う。なんのことかなんて聞かなくていい。
僕は彼の顔を見た。そして、頷いた。
「うん、渡が話してくれるなら聞く」
「全部聞いたら、おまえたぶん俺と文学青年ごっこする気なくなるよ」
「それは聞いたら決めるから、お気遣いなく」
僕は正面を見据え、答えた。その言葉に渡がふうっと嘆息するのがわかる。
そうして、渡は喋り出した。
途中何度も言葉に詰まり、泣きそうに顔を歪めて、それでも渡は最後まで話してくれた。
「なに?」
「俺の母親と……会った?」
僕は驚いて渡の顔を見やった。そのわかりやすい態度で、渡は苦笑する。
「馬鹿、顔に出過ぎ」
渡の苦笑は柔らかく、どこか諦めを含んでいた。
「母親からやたらメールがくるなと思って。もしかしてってさ」
「渡、あのさ」
「いいよ。母親から、何か聞いた?」
渡は僕と彼の母の接触について、何か不満に思っているわけではなさそうだった。
「渡の今の暮らしについて聞かれただけ。お母さんからは特に何も」
仲良くしてほしいって言われたくらいだ。
それを言えば、渡が困惑することは目に見えていたので僕は言わない。
「ふうん」
渡は静かにつぶやき、歩いた。
僕の部屋の近く、以前ケーキを食べた緑地にやってくると、渡は先に立ち草を踏みながらベンチに向かう。
僕も後を追う。
「蚊がいそうだな」
そんなことを言いながら、ベンチにかける渡。戸惑いながら、僕も隣に座った。
「あのさ、ちゃんと話しておこうと思う」
ぽつりと渡が言う。なんのことかなんて聞かなくていい。
僕は彼の顔を見た。そして、頷いた。
「うん、渡が話してくれるなら聞く」
「全部聞いたら、おまえたぶん俺と文学青年ごっこする気なくなるよ」
「それは聞いたら決めるから、お気遣いなく」
僕は正面を見据え、答えた。その言葉に渡がふうっと嘆息するのがわかる。
そうして、渡は喋り出した。
途中何度も言葉に詰まり、泣きそうに顔を歪めて、それでも渡は最後まで話してくれた。