店内には僕の他に数人客がいたけれど、誰もがその現場を見ていた。
そして呆気に取られていた。
「お待たせしました。次の方」
被害者の渡がさらりと次の客をレジに呼び込もうとするので、慌てたのは店長だった。
「遠坂くん!いいから、きみは裏で着替えておいで」
渡が反応も薄くレジを離れるのを、客も店長も僕も「当然だ」と言わんばかりの表情で見送った。
客が途絶え、店長がスタッフルームに入る時、渡の友人ということで顔見知りだった僕も中に入れてもらえた。
渡は上半身裸になり、濡れたタオルで顔や身体をこすっているところだ。
「遠坂くん、災難だったね。大丈夫?」
「まあ、アイスだったんで。ホットだったら火傷したかもしれないですけど」
渡は呑気な返事だ。仮にも客にコーヒーをかけられるという事件の被害者だというのに平然としている。
「なあ、渡、さっきの女なに?」
思わず口を挟むと、店長が先に答えてくれる。
「遠坂くんのストーカーだよ。しょっちゅう来てくれるのはいいんだけど、食事とか誘ってくるんだよな」
渡は至極冷静に追加する。
「毎度、お断りしてたんですけどね。ちょっと気持ちがこじれちゃったみたいです」
僕はその話に感心した。
ほほう、渡にもそんな浮いた話があったのか。いや、実際は渡にその気がなかったからこういうことになったんだよな。
浮いた話というよりは、危ないストーカー事件だ。
そして呆気に取られていた。
「お待たせしました。次の方」
被害者の渡がさらりと次の客をレジに呼び込もうとするので、慌てたのは店長だった。
「遠坂くん!いいから、きみは裏で着替えておいで」
渡が反応も薄くレジを離れるのを、客も店長も僕も「当然だ」と言わんばかりの表情で見送った。
客が途絶え、店長がスタッフルームに入る時、渡の友人ということで顔見知りだった僕も中に入れてもらえた。
渡は上半身裸になり、濡れたタオルで顔や身体をこすっているところだ。
「遠坂くん、災難だったね。大丈夫?」
「まあ、アイスだったんで。ホットだったら火傷したかもしれないですけど」
渡は呑気な返事だ。仮にも客にコーヒーをかけられるという事件の被害者だというのに平然としている。
「なあ、渡、さっきの女なに?」
思わず口を挟むと、店長が先に答えてくれる。
「遠坂くんのストーカーだよ。しょっちゅう来てくれるのはいいんだけど、食事とか誘ってくるんだよな」
渡は至極冷静に追加する。
「毎度、お断りしてたんですけどね。ちょっと気持ちがこじれちゃったみたいです」
僕はその話に感心した。
ほほう、渡にもそんな浮いた話があったのか。いや、実際は渡にその気がなかったからこういうことになったんだよな。
浮いた話というよりは、危ないストーカー事件だ。