件の青年、遠坂渡(トオサカワタリ)とはそこで会った。

僕が気になったのは、彼がとても若く見えたこと。
そして、彼の姿形がとても図書館にそぐわなかったというのもある。脱色したのか色を入れたのか、彼は薄茶色の髪の毛をしていた。
意図してか、前髪を長くしているので、彼の表情はわかりづらかったけれど、髪の束の間から見えた瞳の色が薄かったので、その肌の白さもあいまって僕は彼を外国人とのハーフかと思った。羨ましいな、あの容姿ならモテるだろうな。純日本人の僕は少し彼を羨んだ。

そして思った。なんで、あんな今時の若者がこんなところにいるんだ?

今日も彼は日当たりのいい席からひとつ奥まったところで太宰の全集を読んでいる。
いつも見かける彼は本を読んでいる。図書館といえば、勉強目的でレポートをひろげる学生もいるけれど、そうしたところは見たことがない。学生じゃないのかな。Tシャツにジーンズの格好は学生らしくも見える。

なんにせよ、雰囲気あるなぁ。
横目で見ていたら、ふと彼は立ち上がる。
荷物を持ってカウンターに向かうところを見ると、今日はその本を借りて帰るらしい。太宰の全集の続きは家で読むのかな。