見舞いは翌々日と決めた。
僕は妙に緊張して、服を選んだり、お見舞いの花を手配したりした。渡の話からすれば、彼女は眠っていて目覚めない。それがどんな容体かはわからなくても、身だしなみを整える意味はないのだ。

それでも、僕にとってこの見舞いはちょっと特別なイベントに思える。渡のプライベートに少し近づけること、渡の美しい義姉に会えること。

同時に、僕の頭にはここ最近の妙な声がこびりついていた。
女の子の声だ。
よく通る愛らしい声で、その言葉は三回とも渡に呼びかけるように発せられている。

しかし、渡には聞こえていないとしか思えない。
反応するのは僕だけだから、聞こえているのは僕なのだ。

僕はファンタジーやSFには興味がない。妙な声が聞こえるなんて相当おかしくなっていると不安になる。初めての一人暮らしに疲れていて、幻聴を聞いている可能性が大だ。

だけど、万が一、この声が彼女のものだったら。

渡の眠り続ける義姉のものだったら。

彼女の顔を見て、何がわかるわけではないと思う。
でも、会ってみたい。遠坂深空に会ってみたい。会ったら変わるかもしれない。