僕は取りなすように言う。

「僕が一緒なら、大丈夫だよ。見張りに立ってもいいし、もし乱暴なことをされそうになったら止めに入るよ」

「頼りにならね〜」

渡がバカにしたような半目で、口を横に引く。

「この前、ちゃんと間に入っただろ?確かに腕っ節で敵いそうな気配はゼロだけど!」

どんな理由があったって、兄弟のお見舞いに行けないなんておかしいじゃないか。

「お姉さんの具合はわからないけど、渡が顔を見せたら、元気になる近道かもしれないじゃんか」

「深空は、たぶん俺が行っても喜ばない……それはわかる」

渡は投げ捨てるような口調で言う。それなら、なんでおまえはこっそり見舞いに行ってたんだよ、おまえ自身が行きたかったんだろう?はっきり言えばいいのに。
そんな渡の卑屈が嫌で、僕はいっそう声を張った。

「そんなことないと思うよ。知ってる?脳梗塞とかを起こして意識不明になった人でも、家族の声には反応を示すんだよ?渡がお見舞いに行くのには意味があるよ」

渡は僕の言葉にしばらく黙っていた。

僕は沈黙を守りながら、考えた。渡のため。お姉さんのため。
そんなことを言いながら、僕のためという可能性はないか?……そこまで考え至り、僕はどきりと胸を押さえた。

僕の中には確かにある。
彼女にもう一度会ってみたい。

病室の眠り姫の顔をできるならもう少し近くで見てみたい。そんな下心。