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半月近くが経ち、カレンダーは7月に変わってしまった。
僕はまだ渡に会いに行けずにいた。時間を置けば置くほど、会いづらくなることはわかっていた。
でも、ぼくにはまだ渡に言う言葉がまとまっていない。
あれこれ理由をつけて、本質的に僕はあいつとうまく仲直りする自信がなかったのだ。
そうしたある日、僕のクラスメートが事故にあった。
バイクでの自損事故で、本人は足を折っただけだったけれど入院が必要らしい。
親しい友人だったので、他に2人ほど友達をともなって見舞いに行くことにしたのだ。
梅雨の合間、快晴の日曜日。
西部池袋線のある駅に降りると駅前の花壇で紫陽花が眩しそうにしていた。
駅から近い割に大規模な病院の3階で当の友人はピンピンしていた。
ベッドに寝てはいたものの、他はいつもどおりでしきりに「暇だ、暇だ」と言う。いくつかテストが受けられないので、今年の単位は絶望だ、とため息をついていた。漫画雑誌やら講義のノートやらを渡すと喜んでくれた。
午後の診察まで友人と過ごし、病室を出たのは14時過ぎ。
「なんだ全然元気じゃないか」
他の2人と話しながらエレベーターを降り、ロビーを抜けようとした時、僕はそこで見知った男を見つけた。
「あ……」
「白井、どうした?」
玄関横の階段を登ろうとしているのは他ならぬ遠坂渡だった。