僕は考えてから、ぎくりと立ち止まった。

目の前には、コンビニの外に備え付けられたゴミ箱を片付けている渡がいたのだ。

友人に肩を貸したまま、僕はその場に立ち尽くす。
渡までの距離はほんの10メートル。彼がこちらを振り向けば、僕のことは視界に入る。
落ち着け、気まずいのは一方的な暴力を振るったあいつの方だ。僕が気まずく思う理由はない。

それとも、僕はあいつが怖いのか?
首を絞められたことに、恐怖しているのか?

そんなことはない。絶対にない。……怖くなんか思ってない。

すると、ゴミ袋を持った渡がすっくと立ちあがった。振り向くと、無表情で僕を見つめた。
まるで、僕がそこにいることを随分前から知っていたみたいだ。

「安心しろよ」

渡は僕に聞こえるような声で言った。

「もう、関わんねぇから」

それだけ言うと、渡はコンビニの横の路地に入って行ってしまう。ゴミ捨てに行くのだろうか。

渡に悟られた。
僕がわずかでも彼に感じていた恐怖心を。

その瞬間、僕の頬は熱くなり、火が付いたような羞恥心を感じた。
次に、異常な反発心が湧いてくる。

渡が怖い?そんなことない。おまえなんかに脅されたくらいで僕は怯まないぞ。
だいたい、僕らは対等だ。力が強い者が上だなんて、小学生の論理より陳腐じゃないか。

見てろよ?
何が何でも、おまえに関わってやるからな。

友人は僕の肩に寄りかかって、立ったままほとんど眠っていた。今のやりとりも聞こえていないだろう。
僕は友人を小突いて起こすと、水を買うことはやめて、彼を部屋に送り届けた。