「書生ごっこがしたいなら、他をあたれ」

かちんときた。なんで、こいつはこんな言い方しかできないんだ。そもそも、友達になりたいって思ったのは僕でも、こいつだって本当に嫌なら今日ここに現れなければよかったのだ。もう会いにくるなとメールして、携帯を着信拒否にすればいいのだ。

「おまえだって、僕にメリットがあるから連絡先交換とかしたんだろ?本借りる気でいたんだろ?」

「あんたが貸してくれるって言うからだよ」

「じゃあ、いいじゃん。お互いギブアンドテイクでさ!」

僕は苛立ち声を荒げる。もういいや、はっきり言ってしまおう。

「確かに僕は小説の話ができる相手を探してたよ。渡は僕から読みたい本を借りて、その分、ちょっと文学トークに付き合えよ。それで、お互い満足ってことになるじゃないか。おまえにイッコも損させてないよ?いいじゃん、付き合えよっ!」

僕の剣幕に、渡が少しだけ気圧された顔をする。こいつ、何を興奮してるんだ?という表情。たぶん引いてる。
ほんの数秒、僕と渡はテーブルを挟んでにらみ合うような格好でいた。
やがて、渡が諦めたように席に腰を下ろし直す。

「目玉焼きハンバーグとライス」

ぼそっと言うけれど、僕に注文されても困る。どうやら、渡なりに歩み寄っているらしい。