「恒って呼んでくれるんじゃなかったの~?」

「気持ち悪い。あと、やっぱりあんたストーカー?」

渡は雑誌に目を戻し、梱包を解いている。興味ありませんというのが背中に書いてありそうだ。

「僕んち、近所。図書館からも近いでしょ、このあたり」

渡は答えない。

「バイトしてんの?」

「ああ」

「最近、図書館来ないね」

「バイトのシフト増やしたから忙しい」

「家、近いのか?僕はここから5分」

「遠いよ」

何を言っても一言で済まされてしまう。こちらに顔を向けもしない。つっけんどんな対応に、僕はあからさまに苛立った。なにこいつ。感じ悪い。
めげずに話しかけようとすると、とうとう渡は言った。

「もういいか?仕事中なんだ」

最高に疎ましそうな顔をしていた。

「ああ、そう。それはお邪魔しましたー」

僕はそう言って、買い物をし忘れて店を出た。

歩いていくうちに、なんであの場で怒りを表明しなかったのかと苛立ちが増してくる。
確かに仕事中だったけれど、そんなにうるさくしたつもりはない。やっぱり、僕を避けているっていうのはあながち間違った推測じゃないかもしれない。
それにしたって、なんて礼儀知らずなヤツだろう。あんなのと友達になろうとしていただなんて。