「やっぱり、……僕、おまえと年とりたかったよ」

渡が笑ったような気配がした。


―――――恒はいちいち気持ち悪いんだよ。泣くな。


涙が、……いつのまにか出なくなっていた涙が溢れた。後から後からこぼれた。
そうして僕は路上に立ち尽くし、子どものように泣きだした。


―――――またな、恒。


「うん、またな、……渡」

しゃくりあげながら、僕は渡に言った。

「いつか、また会おうな」

例えば、僕の命が終わる時に、おまえが迎えにきてくれたら嬉しい。

背後の声は聞こえなくなり、僕は空を見上げ強く奥歯を噛みしめた。
ぎゅうと目をつぶると、目尻から大粒の涙がまだまだあふれ出た。

渡と会えた。二十五年ぶりに会えた。
こんなのは、自己満足でしかないのかもしれない。それでも、僕は鮮やかな夕日の中で確かに渡を見たし、たった今、その声を聞いた。
二十五年を一瞬で駆け抜けた。

僕はようやくひとつ何かを抜けたのだ。
例えば暗い影の中、日向を横に見るだけだった日々を終え、陽射の下に出たのだ。

涙はいつまでも流れ続け、いつしか日は落ち、空は濃い青に姿を変えていた。