僕ら家族は驚くほど順調だったように思う。
皆、それぞれの一生懸命に生き、夢や目標に向かって努力している。

二十五年経った今でも、僕は変わらず深空を愛している。
渡との日々に囚われていた僕の手を引き、世界に呼び戻してくれたのは深空だ。彼女の声はいつだって、僕に力を与え続けてくれた。眠っている時も、目覚めた後も。そんな彼女に、言葉に尽くせぬ感謝と愛情を感じる。

ここまで書いておいて、正直僕は深空がこの記録をどう読むか不安だったりもする。
深空を傷つけたくはない。知らないほうが平穏に生きられると秘してきたことを今更暴露するのは、彼女には酷なことだ。

そして、渡も深空がすべてを知ることを望まないだろうと思う。
渡は姉の心に自分の存在がないと知ったら、幾分ほっとするはずだ。

だけど、そんなのは僕が嫌なのだ。

深空を愛し、僕の親友だった渡は確かに存在した。
僕はどうしてもそのことを深空に伝えたい。
深空の心を苦しめたとしても、やはりなかったことにしたくないのだ。