午前中の通勤ラッシュを避け、電車に乗る。
いくつか乗り換え、のんびりとした風情の海沿いの電車に揺られる。
途中、地図を取り出し、どの辺にいるのか確認した。
現在地の近く、道の駅に丸がついている。渡の字で『ココ寄る』と書いてあったのを見つけると、胸がひどく痛んだ。
休憩地点まで考えていたんだな、と渡の妙なマメさに泣きたくなった。
千葉の目的地の海に着いたのは昼過ぎだった。
ほらな、自転車よりずっと楽だ。やっぱりおとなしく電車で来るのが正解だよ。
僕は心の中で渡に自慢するように言う。
空はすでに高く、空気は涼やかだった。
秋の海は凪いでいて、夏休みも終わっているのであまり人がいない。
幾人かのサーファーが波間に見える。僕は砂浜に腰を降ろした。
バックパックからもう使っていないMDプレーヤーを取り出し、イヤホンを耳につける。
すぐに懐かしいイントロが流れだした。
疾走感のあるリズム。ビート。独特のボーカル。
僕がその曲を聴くのは、実に五年ぶりだった。
ボーカルの歌声の向こうに渡の声が聞こえる気がした。
二人で歌いながら歩いたあの日。五年経ってしまった。もう五年だ。
僕は24歳になった。
深空はもう普通の人と同じ生活をしている。お父さんもお母さんも、みんな元気だ。
どうしておまえはいないのかな、渡。
いくつか乗り換え、のんびりとした風情の海沿いの電車に揺られる。
途中、地図を取り出し、どの辺にいるのか確認した。
現在地の近く、道の駅に丸がついている。渡の字で『ココ寄る』と書いてあったのを見つけると、胸がひどく痛んだ。
休憩地点まで考えていたんだな、と渡の妙なマメさに泣きたくなった。
千葉の目的地の海に着いたのは昼過ぎだった。
ほらな、自転車よりずっと楽だ。やっぱりおとなしく電車で来るのが正解だよ。
僕は心の中で渡に自慢するように言う。
空はすでに高く、空気は涼やかだった。
秋の海は凪いでいて、夏休みも終わっているのであまり人がいない。
幾人かのサーファーが波間に見える。僕は砂浜に腰を降ろした。
バックパックからもう使っていないMDプレーヤーを取り出し、イヤホンを耳につける。
すぐに懐かしいイントロが流れだした。
疾走感のあるリズム。ビート。独特のボーカル。
僕がその曲を聴くのは、実に五年ぶりだった。
ボーカルの歌声の向こうに渡の声が聞こえる気がした。
二人で歌いながら歩いたあの日。五年経ってしまった。もう五年だ。
僕は24歳になった。
深空はもう普通の人と同じ生活をしている。お父さんもお母さんも、みんな元気だ。
どうしておまえはいないのかな、渡。