胸がすんと空く感じに、僕は唇を噛みしめた。
喪失の痛みをごまかすために、彼の姉を見舞い続けているなんて、本当はいけないことだろうか。
僕の内側は変わらず痛くただれたままだ。

「恒くん?ねえ、そろそろ?」

僕の様子の変化に、深空が不思議そうな顔で下から覗き込んでくる。
慌てて、深空に笑顔を見せた。

「うん、もうひとつふたつが見え始めてるはずだよ」

彼女の車椅子の横にひざまずき、僕は天を指さした。
闇夜にすいっと一筋の流星が見えたのはその時。

「あ!!今の!!」

深空が感嘆の声をあげる。僕はすぐに違う方向を指さす。

「あっちにも!見えた?」

「ううん。見えなかった……あ、今病院の向こうに流れて行った!」

僕らが指さすのが間に合わないほどの星だった。
放射状にあらゆるところに出現する流星を追い、僕らは何時間も空を眺めた。

空に宝石箱をぶちまけたみたいに、無茶苦茶に転がるダイヤモンドを一生懸命追いかけた。

流れ星が少なくなってきた深夜二時、さすがにもう深空を休ませなければと、僕は撤収を提案した。

「もう戻るの?」

「もうって、何時間もいたよ?深空が風邪ひくと、僕が嫌だし、せっかくOKしてくれたお父さんやお母さんに申し訳ないよ」

「じゃあ、最後に立ち上がって見てもいい?」

僕が手を貸す前に、深空はひとりで車椅子から下りた。
すっくと芝生に立ち、空を見上げる。長い髪がふわりと夜風に揺れる。

「この方が少しだけ、空に近い」

「まあね」

僕は深空が転んでしまわないように、隣に寄り添った。
すると、深空が僕の左腕をぎゅうっと捕まえた。